【う】宇宙の広さを想像してごらん【50音エッセイ】

50音エッセイ

あれは10/15昼の14:30のこと、友人から1件のLINEが飛んできました。

「西の星空がよく見える場所に行かないか?」

ふむ。

どゆこと?

これが恋人とかならロマンチックな話だったかもしれませんが残念ながらただの男友達。星を見ながら開国について語り合うなんてことも現代日本ではまあありません。

大体西の星空って何?西の魔女ならわかるけどまさかドロシーごっこがしたいわけではないだろうし…

ともかく電話をかけて要件を聞いたところ、どうやらアトラス彗星なる彗星が太陽に接近しており、2週間程度肉眼での観測ができるらしいとのこと。

え?何それ、めっちゃ楽しそうじゃん!

手のひらというのは返すためにある。マイペース人間の僕は、先程までの苛立ちはどこへやら集合時間と場所を通学中の電車の中で決定。ついでにメンバーを1人追加。

18:00江ノ島、時間厳守。

東大は駒場(大体渋谷みたいなもの)にあり、江ノ島までは1時間と少しかかるぐらいの距離にあるんですが、それを14:30のLINEで決定する、どうかしてるんじゃないか。

ともかく5限など出られるはずもないので講義を切り、4限が終わるや否や駅へと直行。(ちなみに4限が終わるのは16:40、ギリギリである)

これぞ大学生って感じですね。

道を開けろ。仲良く5限をサボった集団のお通りだ。

結局江ノ島に着いたのが18:00過ぎ、急いで桟橋のようなとことに行くと、すでにそれなりの数の先客がおります。

彗星は結構人気なようですね。

我々も腰を据えてさあ観測だ。

観測だ…

観測だ……

どこ?

彗星は最も明るくても3等星程度の明るさ。肉眼で見ようとするとかなり暗いのです。

とはいえ周囲の人の発言に聞き耳を立てたりしてなんとか観測に成功。

薄暗い中に線と丸が見えるぐらいで決して鮮明とは言えないものの、やっぱり肉眼で彗星を見るというのは何とも言えない嬉しさがありますね。

5限1時間と彗星のトレードオフか、勝ったな。

そのまま30分ぐらいだらだらと見えたり隠れたりする彗星を眺めていましたが、そんな中ふと思うことが。

「地動説を思いついた人ってすごいよなぁ」

僕が星空を眺めていても、そもそも星ごとに距離が違うという発想すら起こらず、ただ半球上の空にいろんな明るさの星がくっついているようにしか見えません。多分プラネタリウムに閉じ込められても感動できちゃう。

それを拡がりのある空間(宇宙)として捉えるだけでもすごいんです。なのにその程度では留まってくれないで、さらに「地球じゃなくて太陽を中心に回っているんじゃね?」などと言い出したらしい。俄かに信じがたい。そりゃ笑われますわ。

知識を得た今ですら、数百光年の位置に星々があるなんていまいちピンときてないですもん。

今見えている星の光は何百年も前のものということになる訳ですが、どうにも信じがたいというか。地球上では1秒前の光を見ているなんてことすら起こらないわけで、光に速度があるということすら腑には落ち切らないものです。

星がカレンダー使ってるとすると、「0:00,1st Jan.,2500: meeting with humans, at the Earth」とか書いてるんですかね。

やっぱり想像がつかないので、分かりやすくするために今の星たちの光が出発した頃のことを想像してみましょうか。

今検索したところベテルギウスはおおよそ500光年の距離にあるみたい。つまりベテルギウスの光が出発した時には日本は戦国時代、世界史でいうと大航海時代ですよ。コロンブスが出航した時にベテルギウスの光も出発したわけです。

北極星は諸説あるみたいですがおよそ400光年。家康が天下統一したり、アメリカにピューリタンの人々が入植を始めた頃に出発した光が、今地球に届いているのか。感慨深いですねー。

だって我々は高々100年程度のスパンで生きているのに対し、今見ている星の光ですら数百年、星の寿命ということになると億年、兆年なんて単位になるんですよ。今ここに生きてるということもすごい偶然的な出来事な気がしてきた。

そう思えば人生は奇跡に満ち溢れていて、世の中にあるあらゆる人、物、情報の中からたまたま選ばれた一握りの幸運が今の僕を構成している友達であり個性であり知識である、あまりに出来すぎた話じゃないですか?

今持っているものを大事にしないとな。この記事を読んでいる僕の友達たち、みんなありがとう。

ともかく星を見るというのはいいものです。鎌倉の海の先にある伊豆半島、その上に散らばる星々。自然の雄大さの前には僕たちなんてちっぽけな存在…

ハッ!

おい、気をつけろ!テンプレ化したエモの襲来だ!

危ない危ない。このままだとエモに脳を支配されるところだった。

今の世の中すぐにテンプレエモに走りますからね。気をつけないと。

ということで次回「え」編は、「エモのテンプレ化について」。お楽しみに!